ひとりぼっちはいやだな…2006年09月09日

『ひとりぼっちのかいぶつといしのうさぎ』
 クリス・ウォーメル 作・絵  吉上恭太 訳 徳間書店 2004



ページをめくるごとに、
ぐいぐいと、
その世界に引き込まれてしまう、
そんな豊かな物語を語る絵本に出会うことはめったにありません。

ましてや、
絵本の新しい世界へとつづく扉が開いたと感じられる作品には、
もう何年も出会っていないような気がします。


『ひとりぼっちのかいぶつといしのうさぎ』を手にしたとき、
表紙に描かれているかいぶつの表情より、
その、長くてベタなタイトルのほうが気になってしまいました。

ひとりぼっちのかいぶつといしのうさぎ

入力するのもややたいへんです。

ひとりぼっちのかいぶつといしのうさぎ と聞いて、
どんな物語を想像します?



そのかいぶつは、
“とても ことばじゃ、いいあらわせない” ほどみにくいかいぶつなのです。

確かに、
画面いっぱいに描かれているかいぶつの顔のアップは、
見れば見るほど、うひゃっ! な気分になるほどのど迫力です。
小さな子のなかには、こわがったりいやがったりして、
目をそらすか、
絵を隠すか、
ページを閉じてしまおうとする子がいるかもしれません。

でも、
私みたいに、それなり(あるいは、かなりの)
人生経験を積んでいるものにしてみれば、
それはそれで味わいのある顔と見て、
まだまだ余裕です。

ところが、
そこから語られるかいぶつの真の姿には、
経験を積んだからこそわかる人生の悲哀というものやら、
自分ではどうしようもない、
生きることのつらさというようなものが感じられ、
じわじわと,
自分の人生と重なって見えてきました。

それって、やばいです…。

それでも、
それでもしあわせ、とかいぶつは思うのです。

それって、深いです…。

その深さと重さがわかる人は…大人、です…。

そして、
そのようなかいぶつの人生に、
いしのうさぎは重要な存在としてそこにいるのですが、
このうさぎさんが、
これまたとても精神的な存在なのです。

形而上的な存在 といってもいいのかもしれません。

う~ん。深いなぁ~。

とくれば、
最後はこうであって欲しいと、
あまいこと思いながら読むのですけど、
それも、
美しいほどの悲しさというか冷たさでもって裏切られてしまいます。


でも、
それこそが、ほんとうの人生なのかもしれない…と、
しみじみと、しみじみと静かに心がざわつくのです。


かいぶつのような人生を送れる強さも勇気も
私には、ありません。

それで私は、
せめて、
いしのうさぎにきづいて、
どうしてこんなところに? と、
不思議に思う人になりたいと思って絵本を閉じたのでした。


どうぞ何もいわずに絵本を閉じてください。
説明も解釈もいりません。
わからなくてもいいと思います。
あるとき、ふと思い出して気づくかもしれません。


目に見える回答ばかりが求められている時代に、
このような絵本があることを教えていただいたことに感謝です。

問われることに答えるだけではなく、
問うことの力こそが必要だと感じています。

小さな子たちが開くこの絵本のさきに、
新しい世界に続く扉が感じられて、うれしい。

…絵本って、
   ほんとうにいいものですね~♪

カメの看板我が家に帰る2006年09月09日

「西荻分室」をはずし、
ロールカーテンにしがみつくカメの看板…。
  …ほんとうは、輪投げ(?)作品。 ・・・製作者・カメ係



ご報告いたします。

西荻にある「かもめブックス」さんで、棚を借り、
「不機嫌 図書室」西荻分室 という絵本やさんをやっておりましたが、
本日(9月9日)、
分室の棚を閉じてきました。

短い期間でしたな~。

いまのところ、
どこかでまた分室を開く予定はございません。

が、しか~し!

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西荻分室オープンをきっかけに始めたこのブログは、
気ままに続いていきます。

これからもどうぞよろしくお願い致しまする~ <(_ _)>