あの文字がこんなところでなにしてるんだろ2009年02月22日

最近の面白い本は?と聞かれると、
私にとって、ではなく、あなたにとって、を考えてしまいます。
なので、つい「どんなジャンルが好きですか?」と聞き返してしまいます。
「いや、あなたが面白いと思った本です」と再度聞かれると、
ああ、、、、と思って、とっさには出てきません。
先日もそんな会話があり、ぼんやり考えている間に話題が変わり、結局、答えることができませんでした。

そのたび、私自身が面白くて好きだと思う本って、あまり紹介しないなぁと思います。

私が好きだと思う本は、私だけが好きでいいんです。
誰かに教えて、つまらない、とか、わからない、なんていわれるのはイヤやし、私は好き、と思う気持ちだけで充分だから、他の人にも好きになってほしいと思わない。だから、どこがよくて面白くて好きなのか伝える言葉を探すことをしないのかもしれません。

そんな私が好きな本に、ユベール・マンガレリの2冊があります。

 『おわりの雪』 2004
 『しずかに流れるみどりの川』 2005
   ともに 田久保麻里/訳 白水社

そのマンガレリの新刊をみつけました。

 『四人の兵士』 田久保麻里/訳 白水社 2008 (写真)

このなかで、ドキッとして、立ち止まってしまった文章が、

“あの文字がこんなところでなにしてるんだろ”

この前後の文章だけでも誰かに伝えたくなってしまったのでした。
だから、紹介することにしたのです。

私はこの文章に触れて、まだ、文字がきちんと読めなかった幼いカメ係のことを思い出しました。
自分の名前にあるひらがなを街の看板にみつけて、指差して、視力検査のように読み上げて。それがたぶん、ひらがなを最初に読んだ瞬間でした。

四人の兵士と、やがて出会う少年の物語。
ただ一人、読み書きができる少年が現れることで、四人の兵士の「生」が確かなものになろうとします。

伝えるために言葉はあるんだなぁって、あらためて。