空にいる人2009年06月29日

数日前、見るとはなしのテレビを、めずらしくつけっぱなしにしていたとき、ふいに現れた(ように思えた)画面にクギヅケとなりました。

画面は映画の宣伝で、男の人が綱渡りをしている荒い画像が流れていました。

とたんに、「綱渡り男!」 と、叫んでしまいました。

「映画になったの?なってるの?なってたの?映画、やってるの?いつ?どこで?」

瞬時にいろんな疑問が生じました。

「綱渡り男」は、数年前に、表参道のクレヨンハウスで見つけた絵本に出てくる男のことです。
その内容に衝撃を受け、その場で絵本を何度も読み返しました。

正確には、

 『綱渡りの男』 モーディカイ・ガースティン
          川本三郎/訳 小峰書店 2005

今はない、アメリカニューヨークの世界貿易センターのツインタワー。
完成間近だった1974年8月7日、
そのタワーの間にワイヤーロープを張り、綱渡りをした男の物語。

実話です。

えっ、ほんとに?

そのときの衝撃があまりに強かったせいか、どうにも現実感がなく、そんな絵本を見つけたことも、綱渡りをした男のことも、誰に話すこともしませんでした。
その後、別の書店で絵本をみつけて、ああ、やっぱりほんとのことやった。と、妙に一人で安堵したのを覚えています。

その「綱渡り男」が実写でテレビ画面に映っています!
しかも映画!ドキュメント!
ほんとうのほんとうに綱渡りをしたご本人が、登場し、当時のことを語っているようなんです。

こぉ~れは、観ないと!

調べると、新宿のテアトルタイムズスクエアで公開中。
すぐに観に行けると思ったものの、新宿に行くのに時間が合わなかったりで、あきらめること3回。
昨日、ちょっと無理して時間を作って、やっと観てきました。

 『MAN ON WIRE』 (写真はパンフレット)

売店には絵本『綱渡りの男』も置いてあって、なんだか知り合いに会ったような感じで嬉しくなりました。

映画は、すごかったです。

いろんな受けとめ方ができると思いますが、私は、ただもう、綱を渡る男が、その空にいる姿に圧倒されるばかりでした。

協力(共犯)した友人や恋人も、当時の様子を語るのですが、その表情が、またとても印象的です。

綱を、あっちからこっちへと、ただ、歩いて渡るだけじゃないのですよ…。

なんなんでしょうね。

その映像を観るだけで、世界がぐらっと揺れてきます。