天動説的物語展開2011年08月18日

昨日(8月17日)の日本経済新聞夕刊、
夕刊読書で、
文芸評論家の北上次郎さんが、
星四つ★★★★をつけている本を見て「おっ」と思いました。

 『チロル、プリーズ』 片川優子 講談社 2011/7 (写真)

私もちょうど読了したばかり。

星四つ。
というのは、
「読みごたえたっぷり、お薦め」という評価。

短い紹介文の終わりに、
“この作家はどんどんうまくなっている。” とありました。
私もこの作家さんの本はデビュー作から読んでいるし、
それは確かにそうだわ!と思いました。

でも、お薦め評価はそこ?と思ってしまいました。
そこだけ?じゃないですよね。

もっと具体的に、
どこがよくてお薦めなのか、知りたい。
知りたかった!




この本は、
『ジョナさん』(講談社 2005/10)の続編です。

そうとは知らず読み始めましたが、
途中から、もしかして?と思いましたらそうでした。

『ジョナさん』は現役高校生の作家さんによる、
高校2年生女子のリアルな青春小説。でした。
続編となるこの『チロル、プリーズ』は、
高校3年生になった主人公の、
受験や恋や友情が入り混じる、
これまたリアルな青春小説。
作家さん自身は、大学6年生(獣医学科)と、「あとがき」にあります。

現役の学生作家さんによる青春小説。
ですから、
それは「リアル」としか言いようがないのかもしれませんが、
ほんとうにリアル?なの?と思った時点で、
私の読書は面白感を失くしてしまいました。


でも、きっと面白い物語です。
リアル?とか思わなければ。

主人公に乗って、
(物語)世界の中心に降り立てば、
あっちからこっちから、
私(主人公)の名前を呼んでくれる人が現れます。

現れて、
主人公の窮地(そこまでの深刻さはないのですが)を救ってくれます。



この頃読む物語って、
だいたい、主人公の周りがぐるぐる動きます。

天動説のような物語展開。

それがいいのでしょうね。

受けている。
っていうのでしょうか。

で、
売れている?

それはわかりません。



ところで、この物語で一番印象に残った。というか、
読んだ直後に、
衝動的に本を放り投げそうになった文章があります。

“志望校の変更は私の意思とは少し離れたところで行われていたし(具体的に言うと先生との三者面談のとき、私の成績を前に母親と先生が盛り上がった結果決定した)、(略)”

大学受験を控え予備校に通う主人公は、そこで出会った男友達に助けられながら受験勉強を続けています。
その男友達と同じ大学に通うのか通えるのか、
気になる結果の前に、主人公は実は志望校を変えて、男友達の第一志望の大学を受験したと言うのです。

そしてその変更は、自分の希望と決意による決定ではなくて、
周囲(母親と担任)の意思によるものだったというのです。


ここで私の我慢の限界が来ました。
さすがに本を放り投げたりはしませんでしたが、
本はいったん閉じました。

そういう受験校決定の様子はリアルにあることなのかもしれません。

そう思ってまた読書を再開しましたが、
どうにもねぇ。


天動説的物語展開は、リアルなのかしら…。

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